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「お客さん? それもワタシに?」
真っ先にバスさんの顔が浮かんだ。
「ああ。
しばらく花壇の方にいると言っていたよ。
行ってあげなさい」
「分かりました」
「……モニク。
ちょっといいか?」
「はい?」
「あんなご立派な方と、一体どこでお知り合いになったんだい?」
「……バスさん、ですか? お客さんというのは」
「そう、バスさんだ」
「彼とは昨日の朝お会いしました。
喋る花に興味を持たれたらしくて、少し……」
「そうだったのか。
ならいいんだ。
余計な詮索をしてしまって悪いね」
「いえ。
では行ってきます」
「うむ」
ワタシは花壇の方へと小走りした。
あんな夢を見てしまった手前、顔を合わせづらい。
でもこの腕時計はちゃんと返さなきゃ。
最新の物で値段も張るだろうから、それはもう心配だろう。
明日になれば分かるとは、この腕時計の事を指していたのか。
そもそもあれはただの夢? いずれにしろ会えば分かる。
ワタシは急いだ。
「……え?」
なんて事だ。
花壇の前でしゃがむバスさん、の隣。
女性がいる。
それも、昨日の娼婦とはまた別の女性だ。
2人はとても親しげにしている。
距離も非常に近い。
肩が触れ合おうがお構いなしだ。
日替わりで女性を連れているなんて。
ひょっとしたら彼は……本当に淫魔なのだろうか。
「あ、モニクさん。
おはようございます。
お待ちしていましたよ」
「おはよう、ございます……」
相変わらずな彼の笑顔に、ワタシはぎこちない返事をした。
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