プロローグ

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 お父様が去って行く。  もう若くないというのにお父様は働き者だ。  ああやって毎日孤児たちの食事を作っている。  私たちが勤める孤児院は他より小さい方。  それでも30人近くはいる。  50歳を過ぎているお父様には決して楽な仕事ではない。  ワタシ、のんきにガーデニングなんかやってていいのかな。 「ねえねえモニクー」 「モニクモニクー」 「何?」 「知ってるー?」 「知らないー?」 「だから何を?」 「昨日ねー、お隣さんのおウチで赤ちゃんが生まれたのよー」 「とっても元気な男の子よー」 「……だから?」 「あらー」 「あらあらー」 「そもそもどうしてそれを知っているのよ。  まさか直接見て確かめたんじゃああるまいし。  あなたたち、花壇から一歩も動けないじゃないの。  産声くらいなら聞こえるかもしれないけどさ。  性別まで分かるのはおかしいわ。  デタラメじゃないでしょうね?」 「デタラメじゃないわよー」 「虫さんよー」 「虫さんが教えてくれたのよー」 「虫?」  我ながら、よくこんなヘンテコ花を育てているものだと思った。 「ねえモニクー」 「今度は何?」 「モニクはまだなのー?」 「まだって?」 「あらー」 「あらあらー」 「何をもったいぶっているのよ。  ワタシの何がまだだって?」 「赤ちゃんよー」 「……赤ちゃん!? ワタシが!?」
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