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「や、梶原さん」
けれど上坂は、にこにことした笑顔で私に手をあげる。……彼にそんな風に親しげに声をかけられる覚えがない。
「どうも。……何か、用ですか?」
「うん。あのさ」
首をかしげる私に、ずい、と上坂は顔を近づけた。
あ、肌がきれいなのは意外。
「俺と、つきあってよ」
「どこへ? もう四限始まるわよ?」
私の言葉に、上坂は、ふ、と笑った。その笑顔の破壊力に、さすがの私も息をのむ。
柔らかそうなふわりとした茶髪に、適度に日焼けした綺麗な肌。すっきりとした鼻筋の上にある瞳は、大きくて黒い。
女子が騒ぐのも、わかるなあ。自分の魅力を十分に自覚してる顔だ。
「そうだな。とりあえず、今日の帰りにスタバでも」
「何か相談でもあるの?」
内容がわかっているなら、必要な資料を用意していった方が話が早い。学年一の成績を誇る私に相談ってことは、試験勉強対策かもしれない。中間考査も近いし。それとも、三年の五月にもなって進路相談かしら。でも、それくらいしか私の用途って思いつかない。
「うん。大事な相談」
「内容を言っといてくれたら、参考資料とか用意するけど」
と、上坂は、私の言葉に驚いたように目を丸くした。それから、おかしそうに笑いだす。
「何?」
「いや、面白いね、梶原さんて。うん。悪くない」
「それは、どうも」
笑ってる姿も様になっているけど、自分が笑われてると思うと私は面白くない。
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