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どうしていいかわからず、私は固まったまま動けない。そんな私を抱くように上坂は顔を近づけて……
「おやすみ」
耳元で一言だけ囁いて、ゆっくりと離れていった。柔らかい笑みを浮かべたまま見下ろしてくるその顔を、私は、ただ見つめることしかできない。
「また来週ね」
ゆるりと手を振って、上坂は駅の方へと歩いていく。
ようやく私が動けるようになったのは、その後ろ姿が完全に見えなくなってさらにしばらくしてからだった。
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