高級ランチと崩れたお弁当

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「ごめん、これ……」 「いいよ。ありがと」  すまなそうな顔をした島田君から、ランチバックを受け取る。  派手に転がっちゃったからなあ。これ、中身は…… 「あらあ、大変ね」  弾んだ声に顔をあげれば、廊下の窓際に立っていたのは青石さんと玉木さんだった。楽しそうな態度を隠そうともしない。 「せっかくのお弁当、もう食べられないわね」 「ざあんねん。せっかく媚び媚びで作ってきた乙女弁当だったのにねえ」  島田君が、顔を真っ赤にして彼女たちを睨む。 「お前らかよ、今、足ひっかけたの!」  え? 「なんのこと? 島田君が前見てなかったから、いけないんじゃない?」  それに対して島田君は口をつぐんでしまったから、前方不注意だったのも本当だろう。二人から顔を背けて私にごめん、と繰り返すと、島田君はそそくさと教室へと入っていった。
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