高級ランチと崩れたお弁当

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 不釣り合いだなんて……言われなくたって、自分が一番わかっているのに。  背後で扉の開く音がして、美希、と呼ぶ冴子の声が聞こえた。でも、振り向けない。少しでも動いたら…… 「あんたなんかどうせ……!」 「みーきーちゃん!」  玉木さんが言いかけた言葉に、陽気な声が重なった。私は、とっさにお弁当の入ったバッグを背後に隠す。 「お昼行こー」  いつもと変わらない上坂が、笑いながら近づいてきた。青石さんたちも、は、としたように口を閉ざす。  私は、後ろ手にしたバッグを、ぎゅ、と握りしめた。 「ごめん、上坂。今日はお弁当作れなかったの」   震えそうになる声を押さえて、いつもと変わらない調子で言った。こんなの……上坂には食べさせられない。
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