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「で、お兄さんの好みは?」
「うーん、可愛いタイプ、かな」
問われて、迷いながら答える。過去の恋人達に共通した特徴と言う物が、それ以外に思い浮かばなかったのだ。
「それなら、アツヤとかカツキとかがおススメだけど」
直ぐに答えを得られ、期待を込めて身を乗り出す。さ、と横目でフロアを見回した。
「どの子かな?」
「二人共、今日は来てないな」
「それは、残念」
同じようにフロアを見ていた相手は、肩を竦めながらそう言った。口ではこう言ったが、そこまで落胆はしなかった。簡単に相手が見つかるなら、苦労はしない。
「あ、でも、お兄さんだったら、一番のおススメは、カウンターの子かな」
続けて言われて、通り過ぎて来たカウンター席をちらりと見遣る。カウンター席には、今、二人しか腰掛けていなかった。
「カウンター? ああ、二人居るけど」
「一人がトウマ、こっちは全然ダメ。誰が誘っても相手にしない子だから。タチっぽいし。もう一人のミツキって子が、おススメ。こっちも誘いには渋いけど、ホントに可愛いんだ」
近い方から順を追って説明され、ふむ、と思う。一応、試してみても良いかもしれない。可愛い子は、一緒に飲むだけでも、癒しにはなるだろう。
「なるほど。ありがとう」
言いながら席を立つ。当然、目指すはカウンター席、だ。
「ごちそうさま! 良い夜を」
「その、悪かったな。ごちそうさま」
二人にそんな言葉を貰って、俺は笑顔が浮かぶのが分かった。好みの子達では無かったが、気持ちの良い二人だった。二人にも、良い夜を過ごしてもらいたい。軽く手を上げて挨拶に変えると、脚を繰る。さて、今夜は、俺に取ってはどんな夜になるのか。
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