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 校内に響く始鈴のチャイムは、学校の敷地内に居ればどこでも聞こえてくるが、くるみが聞いているのは教室ではなく、先程逃げ出したが故に屋上という結末を迎えた。  今日も、言えなかった。  で、何故か。 「私と友達になってくださーーいっ!」  人目を憚らず(はばからず)叫んでいた。 「たったこれだけのことなんだけどなぁー…」  屋上に設置された銀色の手摺をがっちり両手で握り込む。  背伸びをするのと同じ要領でつま先立ちになると、体勢を屈まらせて上半身の全体重を手摺に預けて叫ぶ。  今日言いたかった台詞を。  因みに今、躾のなってない悪戯な風が吹けば、くるみのスカートは見事に舞い上がるだろう。  そんな風が吹かなくても誰かが下から覗き込めば、白いランジェリーが見えてしまう危うい体勢だったりするのだが、くるみは全く気にしなかった。  一時間目真っ只中に屋上に来る者など、くるみか鴉くらいのものだ。  そう、思っていたのに。  くるみの身体が、黒ひげ危機一髪くらい大きく跳ね上がった。 「時化た面だな。にしてもさっきのあれはなんだ?」 「きゃぁぁぁぁーー!!」 「煩いぞ人間!耳が痛ぇーだろうが!」 「なっ、ななななな、なっ、何してるんですか!?」  突然、むかつくくらい予告なしに、朝出会った猫の顔がどアップで現れた。  思わず尻餅を付いてしまう。  あげくの果てに、猫から逃げようと四つん這いになり、猫にお尻を向けて四足歩行してしまう始末。  格好の的である。 「人間。お前それでも雌か?はしたな」  自身の粗でもない姿に、スカートを全力で押さえ、脚をM 字にして屋上の床に座り込むと、くるみは顔全体を薔薇のように赤面させた。  真っ赤っか。である。 「君の所為じゃないですかっ!!!」 「失敬な。自分の失態を神の所為にするな」  言いたいことは山ほどある。  だが、今一番言いたいことは。 「さ、最低ですっ!!!」  言ったところで何が変わるわけでもないのだが。  取り敢えず、言わずにはいられなかった。
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