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何故振り返ってしまったのだろう。
何故、須田と轟から目を離してしまったのだろう。
そんなことを後悔する余裕も無いくらい、転んでしまったくるみが心配で仕方なかった。
刹那な隙を見逃さず、轟が拳銃を拾いに走る。
轟の素早い動きに、須田も驚きを隠せないまま飛ばされた拳銃を探した。
...くるみ。
瞠目した瞳。
地面に這い蹲るくるみの姿。
拳銃を拾い上げる轟。
銃を見つけて走り出す須田。
一変した今の状況に、海は冷静な判断をくだせない。
起き上がらないくるみ目掛け。
海は走り出してしまった。
「いっ、た...」
「くるみっ!!」
転んでしまったことを後悔するよりも早く、聞こえた愛しい人の声。
知り合ってから、どんなことがあってもくるみの傍にいてくれた。
どれだけ海に助けて貰ったか分からない。
どれだけ希望と勇気を貰ったか。
分からない。
普段は見せない、表情。
もの凄い速さでくるみに向かってくる海の不安に満ちた顔を見て、くるみは罪悪感で苦しくなった。
必死にくるみに手を伸ばす。
その、海の後ろ。
銃を構える。
二人の男。
銃口が海に向いた。
...。
初めて感じた、海を襲う危機。
もしも、撃たれたら...
死。
くるみが、向かってくる海の方へ体制を変え、そのまま一直線に走り出す。
どれだけ…助けて貰ったと思ってるの。
どうして…私の為だけに動いてくれるの。
初めて会った時から、貴方はずっと変わらない...
ずっと…ずっと変わらない。
1度でいい。
お願い...神様。
死なせない。
今度は私がっ...
海くん…
海くんっ!!
死んじゃっ!!
「だめぇぇっ!!!」
ドンッ!!
想いは、時を繋ぐ。
身体が勝手に動いた。
くるみが。
海を。
突き飛ばした。
…
…。
遠ざかる、くるみの安堵に満ちた。
笑顔。
ぱっああああっっん!!!
響く銃声と、火薬の匂い。
くるみの顔が弾け飛ぶ。
鮮血が。
舞う。
ぱたりと倒れて、くるみは動かなくなった。
起きた惨劇は。
願いとは遙か遠い未来を具現化し。
全てを。
ぶち壊した。
「え、、」
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