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海くん...
海くん!
海くん?
海くんっ
色んな、くるみの笑顔や嬉しそうな顔が頭に浮かんだ。
看護婦からくるみの手術が成功し、今はくるみの家族が手術の結果と今後の状況を担当医から聞いているところだと、説明された。
手術の成功。
...良かった!!
くるみが一命を取り留めた。
嬉しかった。
心から安堵した。
平川に言われたことなんか気にならなくなるくらい、身体中に広がったもやもやが吹き飛んだ。
目を覚ましたら抱きしめよう。
ずっと傍に居てやろう。
病室に向かっている途中、海はそんなことを考えながら禁止されている病院の廊下を走りまくった。
海にくるみの手術の話しをしてくれた看護婦が、最後に何か言おうとしていたのを思い出したが。
話しを聞く前に海は走り出してしまった。
ーー手術は成功しました。...でも!
...でも?
なんだったんだ...?
近づく病室。
一室だけ光が漏れている。
...あそこかっ!
走るのをやめて、ゆっくりと歩く。
扉は空いていた。
ーー手術は成功しました。...でも!
「植物、状態...」
部屋に入ろうとした脚が、止まる。
聞こえた声。
...くるみの、、お父さん。
「植物状態って...どういうことですかっ!手術は成功したって言ったじゃないですかっ!!」
しょく、ぶつ...。
ベッドの上で眠るくるみ。
頭に、何重にも巻かれた包帯。
息が、できなくなった。
...植物、状態。
その言葉の意味を咀嚼するのに。
病室の入口で固まった海は。
長い時間を使った。
ーー手術は成功しました。...でも!
考えるのをやめた。
答えは。
くるみの眠っている姿。
そのものだ。
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