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わんとも、めえとも鳴く動物がいるのだと知ったのは、家でテレビの動物番組を観ているときだった。
世の中には不思議な動物が居る。
テレビの前でビー玉のような大きな瞳をひんむいたのも無理はない。
そこに映し出されたのは、「椿くるみ」の大好きなパンダだったからだ。
でも、今はあの時を越える。
なんですか。これは。
「何見てんだ」
「…」
「しかとか人間。いい根性してんな」
界隈の住宅を囲うブロック塀。
右を見ても左を見ても家、家、家の住宅街は、くるみの自宅から数十メートルは続き、彼女の足が止まったのは五十メートル地点といったところの、ブロック塀の上。
えーと…。
猫が口を利いた。
拙さなど微塵も感じさせない、バスケットボールほどの大きさがある威風堂々たるその姿は、猫というには酷評を得る好適しない部分がある。
尻尾が八本。
こいつは何者。
「なんて顔だ。ナマケモノが目を見開いたら多分そんなだな」
「しゃ、しゃしゃしゃ…」
「喋って何が悪い」
思っていたことを当てられた。
これがマジックだとかメンタリズムなのであれば喜んでいただろう。
けれども、当てたのは喋る猫だ。
驚くな、なんてのが無理な話だった。
「ね、猫は!」
「普通喋らねーな」
また当てられる。
ちょっとだけむっとする。
「まぁー仕方ない。おいらは同類にしか見えない神だからな」
「…」
「またしかとか」
「い、いえ…」
「信じてねーだろ」
学校への登校中に突如現れた、自身を「神」と呼ぶ猫の可笑しな点は二つ。
まずは人間さながらに口を利くこと、さらには一本一本に意思があるかのように動く八本の尻尾。
他に変わったところはなく、なんの変哲もない猫のようだ。
猫種は確か、ロシアンブルーだったと思う。
きりっとしたブルーの瞳に灰色の体毛。口調からして雄であろう猫は、人間だったら確実にイケメンの称号を手にするだろう顔立ちの良さだ。
四年ほど前から、くるみには変なものが見える。
それは世間一般の意見を借りるのなら「幽霊」なんてものなのだろうが、見えるのは人間ではなく、動物の霊ばかりだった。
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