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それから3時間後、事務所に戻った俺は依頼者に電話を掛けて怪奇現象を詳しく訊ねることにした。
その結果、悪霊の正体がぼんやりとだが掴めてきた。
依頼主の町村には強姦されそうになった過去がある。未遂に終わったものの、その時の恐怖は鮮明に残っているようだ。
町村の予想では、あの時の強姦未遂の犯人が何らかの理由で死に、悪霊となって自分の元へ来ているのでは無いかと言う話だ。強姦を達成出来なかった悔しさが念となってこの世に残り、再び町村を襲おうとしている。
町村の話が本当なら、確かにそれが一番可能性が高い。緊縛除霊で十分対応出来るレベルだ。
ホットコーヒー片手に悪霊の正体を考察していると、いつのまにか日は沈んでいた。
「玉袋、依頼主に除霊費の説明はしたって言ってたよな?」
「はい。駅前のラブホテル5泊分くらいの除霊費になると思うけど大丈夫ですかと尋ねたら全然オッケーって言ってました」
「よし、この除霊が終わったら先月の給料を振り込んでやる。玉袋、お札は持ってるか?」
「あっ、そういえばこの前トイレ入ったら紙が無かったんで使っちゃいました」
「バチあたりなことしやがって。ケツにイボが出来ても知らねーぞ」
「逆にイボくらいで済むのが不思議っす。先に下降りてエンジン掛けときますねー」
玉袋がドアをバタンと閉めるのに合わせて腰を上げた俺は、机の中からロープを取り出した。
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