「先っちょだけ」が口癖の悪霊

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依頼主である町村の家を目指す。玉袋が言っていた通り、約40分で到着した。 町村の家は新興住宅地の一角にある。二十代の女性が一人で住めるとは思えないので、親と同居しているのだろう。 【町村】と書かれた表札の横のチャイムを押すと、(いぶか)しむような女性の声が聞こえて来た。電話とは声が違うので、母親だろう。 「ど、どういったご用件でしょう?」 時刻は既に20時。訪問者が普通は来ない時間なので警戒しているのだろう。 回りくどい言い方をしては逆に怪しまれると思った俺は、ストレートに訪れた理由を話すことにした。 「このままでは娘さんが先っちょだけ入れられてしまう。俺たちは、その先っちょだけ入れようとしている輩を縛り上げる為に来た」 「ひっ! 警察呼びます」 どうやら、ストレートに伝えすぎたらしい。慌てて弁解しようとしたら、玉袋が俺の口を押さえつけながら喋る。 「ごめんなさいねー!この人、頭おかしいんです。あっ、私達は娘さんから除霊の依頼をもらって来た竿谷霊能事務所の者です。だから警察は呼ばないでくださいませー」 玉袋の声を聞いて安心したのか、最大限に警戒していた町村母の声が柔らかくなる。 それから数分で玄関は開き、依頼主の町村美佳とエプロン姿の母親が俺たちを招き入れた。 「お待ちしていました」 そう呟く町村の表情はかなり衰弱している。どうやら、かなり危険な悪霊に憑かれているようだ。
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