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町村は二階にある自分の部屋へ俺たちを案内する。
階段を上ってすぐの扉を開き、「適当に座ってください」と告げた。
部屋の中にはクマや半魚人のぬいぐるみなどがあり、女の子らしい雰囲気に統一されている。
壁には韓流スターと思われるポスターも貼られていた。サインなのか分からないが、【ポ・チョムキン】と日本語で書き込まれていた。
俺は部屋を見つめながら霊視するが、嫌な雰囲気は漂って来ない。悪霊に狙われた部屋は独特の嫌な臭いがする。それはダチョウの卵を腐らせたような臭いなのだが、それもこの部屋には漂っていなかった。
不思議に思いながらもカバンからロープを取り出して、フローリングの上に腰を下ろした。
「そのロープで、私を縛って悪霊を追い出すんですか?」
何故かキラキラした目で俺を見つめる町村。
「いや、俺は人を縛り付けたりはしない。縛るのは悪霊だけだ」
「よく言うよ。15年前までは人を縛りまくってたくせに」
今日の玉袋はやけに突っかかってきやがる。やはり給料を与えていないのが原因か。
そもそも緊縛友達のこいつの母親、玉袋さわ子に頼まれてうちで面倒見ているが、実際他に移ろうと思えば移れるだろうに。この若さと美貌ならキャバクラでナンバー8くらいにはなれる。それなのに俺の側にいる。
「さてはお前、俺にホの字だな?」
「は? ホの字? いつの時代のセリフですか、それ」
妙な沈黙が流れ、町村は不思議そうに首を傾げている。
たった一人、ジェネレーションギャップに震えながら時が過ぎるのを待つが、深夜2時までは時間があり過ぎる。
沈黙に困った町村は晩御飯を食べてくださいと俺たちをキッチンへ案内した。
これでは、まるで突撃隣の晩御飯だ。無料で頂く訳にはいかないので、除霊費をラブホテル4泊分にサービスする事になった。
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