モデルハウス

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 恵里が住宅展示場のモデルハウスで働くようになってから6か月たつ。土日にモデルハウスを見学に訪れるお客様に、外壁から、内装、設備、インテリアプランの立て方、冷暖房効果や、そういうエトセトラを住宅会社から来る社員とともに、笑顔でご案内する。恵里は女性の観点から、キッチンの使いやすさ、サニタリールームの清潔さ、生活動線がいかにスムーズかを説明する。  モデルハウスに来る家族の年齢層は様々だが、昨今では若い世代が子供づれで見に来ることも多い。低金利時代のメリットが長く続くことで、住宅購入の年齢層が低下しているのは、住宅業界では周知の事実であった。 「野沢恵里さんは素人っぽいところがいいね」  交代で来る住宅会社の男性社員はみんなそういう。  恵里が換気扇の掃除がとても楽ちんとか、お風呂でリラックスできるのが半端なく心地よいとか、ベッドルームではお姫さま気分とか、リビングのまったりした心地よさとか友達感覚でお客様の奥様に話すと、同年齢といったこともあるのだろう、ふつふつと好感度があがるらしく、 「ここ、いいかも」と子供を抱っこしている夫たちに囁いている。  むろん、男は最後にはカミさんに従うわけである。  そんなことばかりが効果ではないにしても、この住宅展示場での契約件数が少しずつ伸びているのであった。  今日は、と恵里は三倍速で思い出す。  まとまった雨が降ったのと、秋のこの頃は地方の祭礼や行事があるのか、住宅展示場に来る客はごくわずかだった。
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