プロローグ

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 私は淀んだ。アイスピックの代わりに、ストロー。小さな望遠鏡に見立てて握りしめたまま、キッチンの向こう側。果てしなく続く空の奥をぼんやりと眺めながら。  籠の中から見とれるのは渡り鳥。風を操る旅人が、太陽に溶けて消えていく。ストローから目を離すと、きらめくような日差しがブラインド越しに瞬いて、ここのところ急激に冷え込んだ空気を優しく包んでいた。
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