冷雨と鴉

2/2
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
擦りきれた一級河川の看板に鴉がとまっていた。 冷たい雨に打たれて孤独にみえた。 「全部ぶち壊してあげる」 あの日の言葉を思い出す。 「じゃあここで私をぶち壊して」 過激な誘い文句が浮かんでは消える。 毎朝のように泣いている 息を、やめられたら 楽になれるだろうか あの人にとっては最早、(ゴミ)のようなものだとしても 一生背負い続ける傷だ。 もうすべてが厭わしい。 このまま壊れてしまいたい 壊されたい もう何もかもが手遅れなのだ。 死んでしまった精神が、砂のように崩れていくのを痛みさえも麻痺したまま、傍観するしかないのだ。 あの鴉はどうしただろうか。 ずっとあの場所で体温を奪われ続けたのだろうか。 それとも、雨避けを求めてどこかに飛び立っていったのだろうか。 通りすがりの私に、知る術などない。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!