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擦りきれた一級河川の看板に鴉がとまっていた。
冷たい雨に打たれて孤独にみえた。
「全部ぶち壊してあげる」
あの日の言葉を思い出す。
「じゃあここで私をぶち壊して」
過激な誘い文句が浮かんでは消える。
毎朝のように泣いている
息を、やめられたら
楽になれるだろうか
あの人にとっては最早、塵のようなものだとしても
一生背負い続ける傷だ。
もうすべてが厭わしい。
このまま壊れてしまいたい
壊されたい
もう何もかもが手遅れなのだ。
死んでしまった精神が、砂のように崩れていくのを痛みさえも麻痺したまま、傍観するしかないのだ。
あの鴉はどうしただろうか。
ずっとあの場所で体温を奪われ続けたのだろうか。
それとも、雨避けを求めてどこかに飛び立っていったのだろうか。
通りすがりの私に、知る術などない。
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