春色

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声がでかくてガサツな印象のギャルがさっきからうるさく喋り続けている。 訛りがあって、イマイチ日本語かどうか判断しかねる。 何が言いたいかというと、非常に五月蝿い。 ここは、そういう場所じゃないんだよ。 と、注意してあげたい気分になる。 いや、その役目は一緒にいる保護者のものなのだけれど。一向に役立たずだ。 早く帰れ。 シブーストの土台のパイ生地が、運動靴の底みたいに綺麗に分離したものだから、先に食べてしまうほかなかった。 併せて注文したカフェラテは氷が多めだし。 あまりいいことがない。 思わず舌打ち。 淡い色ばかり身に纏って、季節に馴染んで出掛けた。 不調を無視して、面倒な気持ちに蓋をして。 人の多い環境に慣れるため。 活動量を徐々に増やすため。 無理をしなければ何もできない。 そんな自分が嫌になることもある。 だけど、そんな自分をデフォルトとして受け入れつつある。 たぶん この先、多くの人が当たり前にできているような生活を送ることは難しいのだろうと、分かっていた。 遠く遠くの高周波すぎる耳鳴りも、内科的異常のない呼吸苦も、目眩でくらくらする浮遊感も、そう簡単に治らない。 些細なことがストレスになる。 例えば、さっきの声ばかりでかい、頭の悪そうなギャルとか。 天候やちょっとした気圧の変化とか。 ふとした時の質の悪いフラッシュバックとか。
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