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そんな事を思い出しながら目を閉じていると、目蓋の裏側にぼんやりと女の子のように可愛らしかった昔の広海の姿が浮かんできた。
たぶん、小学校に入る前の記憶だ。
色白な肌、透き通るような薄茶色の奥にエメラルドグリーンが広がっている綺麗な瞳、薄桃色の唇。肩まで伸ばした瞳の色と同じ薄茶色の髪の毛は、時々ママさんの手によってパーマをかけたようにくるんとカールされていた。
「じゅりちゃん!」と、フワフワの髪の毛を揺らしながら満面の笑顔で私に駆け寄って来て抱きつく広海は、それはそれはお姫様のように可愛らしかった。
そうやって広海が来ると、私はなんだかとても嬉しい気持ちになって、その頭をまるで大切な宝物を愛でるように何度も撫でていた。産まれたのは広海の方が先だったけど、その頃の私は、広海の事を妹のように可愛がっていたと思う。
それが逆になったのって、いつからだったかな。
「じゅりちゃん」って呼ばれていたのに「樹里」って "ちゃん" が付かなくなって、見下ろしていたフワフワの頭は手を伸ばさなければ撫でられない位置まで高くなって、いつしか見上げなければ薄茶色の瞳と視線を合わせる事ができなくなっていた。
そして今。まるで私が宝物になってしまったみたいに、広海にそっと優しく頭を撫でられている。
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