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ーー「休んでてもいいけど、寝るのはダメだ。このまま寝たら、風邪引くぞ」
……あれ?違った。
私の知ってる広海なら、こんな風に優しく私を揺り動かしながら起こしたりなんかしないはずなんだけど。
ーー「おい、樹里。聞こえてるか?頑張って起きて帰るのと、俺が抱えて帰るのとどっちがいいんだ?」
そして、間違ってもこんな風に優しく聞いてくれるはずがないし、それに……ん?抱えて帰るって?
予想と違う広海の言葉を、頭の中で繰り返す。
返事が無い事で私が寝ていると思ったのか、広海の身体がゆっくりと私から離れるように動き、広海に体重を預けていた私の身体も、そのまま床に向かってゆっくりと倒されていく。
ぱたんと横になる直前に、固い感触の何かが頭に枕のように差し込まれた。
まだズキズキと痛む頭に感じた違和感に思わず目を開けると、すぐ目の前に死ぬほど綺麗な顔をした広海がいて、私はようやく開いた目をさらに見開いたまま、ピシリと身体が固まってしまった。
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