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こんな風に、いつも通りに意地悪で口の悪い広海だと思って油断していると、次の瞬間には、びっくりするくらいに甘く熱っぽく迫って来る。
その変化は突然で、いつどこで広海のスイッチが切り替わるのかが全く分かんないから、私はその度にあたふたして、情けないくらいに動揺してしまう。
私達の距離は、1ヶ月経っても全く縮まらない。
それは、私が広海の側にいるだけで心がドキドキしてうずうずしてしまうからで、広海が二人の距離を縮めようと近づいてくる度に、恥ずかしくてたまらないような何とも言えない気持ちになって、全力で離れてしまいたくなってしまうからだ。
「ほら、立てるか?」
……また余計な事を考えてぼーっとしてしまった。
目の前に差し出された手をそろそろと掴むと、広海は私の身体を支えながら立ち上がらせてくれた。
「歩けるか?」と心配する広海に「大丈夫」と答えると、支えていた手はあっという間に離されてしまった。
そのまま靴を履いてレジに向かう背中を、ふらふらと追いかける。
広海はそんな私を側に引き寄せて、自分よりも少しだけ前を歩かせてちゃんと歩けているか確認しながら進んでくれた。
だけど、その手は再び私の身体を支える事はしなかった。
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