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「そして必ずあなたから彼を奪ってみせる」麻友
麻友はそう捨て台詞を吐いてすたすたと前を歩いて行ってその場を後にした。
そして1人になった花奏は密かに涙を一雫だけ頬へと流した。
彼女はただ穏やかに幸せになりたかっただけだった…
誰かと争ったり、奪い合ったり欺き合わずに、ただ静かに笑いあって過ごせていればそれで幸せだと思っていた。
だけどそんな穏やかな日々はそれを望む彼女にはなかなか訪れなかった…
それから少しして花奏は図書室に来た。
もともと小説が好きだった花奏にとって図書室は一番居心地が良くて穏やかに過ごせる場所だった。
いつも休み時間になると図書室に来ていた花奏はいつものように好きな本を手に取りお気に入りの席に座った。
そして静かに夢中になって読んでいると不意に横から声が聞こえてきた。
「何を読んでいるの?」陸斗
「わあ…もうびっくりした」花奏
花奏に声をかけたのは同じクラスで隣の席の山崎 陸斗だった。
少し驚きながらも笑って花奏は彼を見つめながらそう言った。
そして花奏の横の椅子に座った陸斗は花奏が持っている本を覗き込んで見た。
「ふーん、また読んでるんだその小説」陸斗
陸斗は微笑みながら本から覗いていた顔を離して花奏にそう言った。
すると花奏は手に持った本を見つめながら隣にいる陸斗に話した。
「この本は私が一番好きな小説なの…シェイクスピアのロミオとジュリエットは悲劇の恋を描いた物語だけど私にはとても美しくて人間らしい作品に思えて」花奏
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