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「そんな…まさかあの人が、あの風間伊月…」花奏
花奏はそう一人呟くとなんとも言えない不思議な気持ちになった。
あんなに近くに憧れの人がそばにいたーー
花奏はそれを思うだけで興奮と嬉しさが心の中で溢れるくらいに湧き上がった。
そして花奏は京子に聞いた。
「風間先生はよくここの出版社に来るんですか?」花奏
「ええ、よくではありませんけど月に何度かはいらっしゃいますよ」京子
京子は前のめりになって伊月について聞いてくる花奏に少し引き気味でそう答えた。
でも京子はそんな花奏の様子に少しある警戒心を抱き始めていた。
そしてわざと京子は花奏に言った。
「一条先生ってもしかして風間先生のこと好きなんですか?」京子
「えっ…!」花奏
花奏は突然言われた言葉に軽く動揺すると、少し考えてからはっきりと答えた。
「いえ、私が風間先生を好きだなんて…恐れ多いですし…それに私はただの風間伊月のファンですから…」花奏
花奏の言葉を聞いた京子は一瞬ほっとした表情を見せると再び話を始めた。
「まあそうですよね…一条先生はまだ20歳だけど風間先生はもう30歳ですからね」京子
京子は怪しい笑みを浮かべて花奏にそう言った。
それはまるで何かの警告のようだったーー
それからなんとか無事に書籍化の打ち合わせが終わって花奏は軽く挨拶をすませてから編集部の部屋を後にした。
それを見送った京子は花奏の後ろ姿を一瞬だけ睨むように見つめた。
「あんな若い子が伊月くんの近くにいるなんて……一条花か…花あなたは死んでも私の邪魔をするのねーー」京子
京子は誰にも聞こえないように1人でそう言った。
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