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それから花奏は帰りの電車の中で一番端の席に座るとがたがたと静かに揺られていた。
揺られている間、花奏はふと京子の言ったことを思い出した。
『一条先生はまだ20歳だけど風間先生はもう30歳ですからね』京子
花奏はその言葉を聞いて以来、不思議とふたりの間に見えない壁のようなものを感じていた。
その感情は花奏自身も理由が全く分からなかった。
だけどそれでも、伊月に対して花奏のなかではっきりとしていることが一つだけあったーー
それは…“もう一度会いたい”その想いだけが花奏の心の中に小さな今にも消えてしまいそうな灯火みたいにあった……
『どうしてだろう…手の届かない遠い存在で、歳も全然違うし…今日初めてあったのに、また会いたい…そう思わずにはいられなかったーーー』花奏
花奏は心の中だけで誰にも聞かれないようにそう言った。
そんな想いを胸に秘めながら花奏は駅に着いて電車を下りるとそのまま寮へと歩いて帰っていった。
しばらくゆっくりと歩いて寮の前まで着くと、寮の外で隼人が1人で立っていた。
「隼人?」花奏
花奏はいつからそこにいたのかも分からない隼人の姿に驚いていると、隼人は花奏の声に気づいて横を振り向くといつものように笑顔を見せて花奏に声をかけた。
「よ! おかえり花奏」隼人
隼人はそう言いながら花奏の前まで歩いて近づいた。
花奏は驚きながら隼人に聞いた。
「なんで…? どうしてここに隼人が?」花奏
「いや、別に…ちょうど俺も授業さっき終わったからそろそろ花奏も打ち合わせ終わったかと思って」隼人
隼人は少し恥ずかしそうにしながら目線を逸らして花奏にそう言った。
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