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すると隼人は突然大きなくしゃみをした。
軽く鼻をすすっている隼人の姿に花奏は不意に心配になって隼人に近づくと伺うように顔をまじまじと見た。
「大丈夫隼人? まさか風邪でも引いたの?」花奏
「いや、これくらいなんてことないよ」隼人
「だけど顔色悪いよ…」花奏
花奏は本気で心配しながらそう言った。
隼人は思わずいつもより距離が近くにある花奏の顔に胸がドキドキと高鳴りながらも恥ずかしくてまともにその顔を見ることが出来なかった。
だけど正直なところ隼人自身も自分の体調の異変にだんだん気がついてきていた。
『やばいな…だんだん目が霞んできた…』隼人
隼人は花奏から目を逸らしたまま嫌な寒気と徐々に気が遠くなっていくのを感じながらも花奏に何も返す言葉が出てこないまま隼人は花奏の方に静かに倒れた。
「えっ…」花奏
花奏は突然来た重みと感触に驚くと軽く隼人を揺さぶった。
「隼人? ねえ、隼人起きて! …隼人!」花奏
花奏は気を失った隼人を内心慌てながらも助けたい一心ですぐに隼人の腕を自分の肩にまわして隼人の部屋に駆け込んで行った。
そしてその頃、伊月は最初の予定よりも大分早く用事が終わった為、このあとの予定が他に何もないことを確認すると伊月は自宅の高級マンションに車で先に帰っていた。
家に着くと、すぐに部屋の明かりをつけた伊月は暖かい紅茶を淹れたティーカップを片手に書斎に移るとすぐに机に置いていたパソコンを開いた。
「確か今度書籍化になる作品は…夜の海に映った月だったな」伊月
伊月はそう呟きながらパソコンで花奏の作品を検索するとすぐにそれを見つけた。
伊月は今日初めて出会った一条花という新人作家がどんな物語を描く人物なのか興味があった。
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