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それから伊月は作品をじっくりと読み始めた。
読み始めて数分後、伊月は全身に鳥肌が立ったのを感じた。
そして気づけば一気に物語の世界観に浸っていた。
時間も気にせずに伊月はページをめくっていったーー
それから2時間後、ようやく読み終えた伊月は瞳に涙を浮かべていた。
主人公や他の脇役たちの切なる想いが交わり合い、ラストではそれぞれの悲しい結末とほんの少しの希望が描かれていた。
「すごい…本物だ…」伊月
伊月はしばらくしてからそう1人で呟いた。
すると伊月は最初に聞いた森山編集長がこの作品について言っていた言葉を思い出した。
『実に描写が素晴らしく』森山編集長
「違う…一条花の作品は描写がすごいんじゃない…彼女はそんなものではない、彼女の本当にすごいとこはこの物語を描くその感性だーーー」伊月
伊月は嫉妬にも似た気持ちで1人でそう言った。
作家としてのテクニックじゃない…生まれ持ったその感性がこの小説の切なさと悲しみが絶妙なバランスで物語の世界観を作り上げているのだと伊月は分かった。
そしてこれが本当の“才能”だと伊月は静かにそう思ったーーー
その頃、寮に戻った花奏は隼人の部屋にいた。
あれから倒れた隼人は部屋で熱を測ると38.1の熱があった。
花奏は驚きながらも隼人をベットの上に寝かせてからいろいろと準備すると付きっきりで看病していた。
花奏は熱でまだ眠っている隼人を不思議に思いながらふと見つめていた。
「どうして隼人は、あそこにいたんだろう…」花奏
季節は今は冬の1月の終わりで天気予報でも今週は今シーズン最も寒さが増すと言われていた。
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