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「これ…本当に花奏が作ってくれたのか?」隼人
「うん…だって私を待ってたせいで隼人が熱を出したんだからこれくらいは当たり前でしょ」花奏
花奏の言葉に隼人は信じられない思いでいると、その様子を見かねた花奏はお茶碗に土鍋からおじやをおたまでよそってあげると隼人の目の前にそれを置いた。
隼人はその様子を見て、どんな言葉で表せばいいかわからないほどの思いを抱いていた。
“今すぐ抱きしめたい”衝動と想いに駆られていた隼人はそれを堪えるのに必死だった。
何も知らない花奏は微笑みながら隼人を見た。
「何してるの? せっかく作ったんだから冷めないうちに食べて」花奏
花奏はどこか少し呆れたような口調で優しく笑いながらそう言った。
「ああ、そうだな…いただきます」隼人
隼人は静かにそう言うと、れんげとお茶碗を持ってゆっくりとひと口を口に運んだ。
それを口に入れた瞬間、隼人は驚いて自然と目を少し見開いた。
「すごく美味しい…」隼人
隼人は予想以上の初めて食べる花奏の手料理に美味しさと嬉しさが混じって感動していた。
その様子を見た花奏は満足そうな表情で言った。
「良かった~ 口に合わなかったら本当にどうしようかと思った」花奏
花奏は安心したように笑うと、隼人は食べる手を止めて改めて花奏に向かい合って一言だけ言った。
「ありがとう」隼人
「ふふっ、私が友だちで良かったでしょ?」花奏
「ああ、そうだな…花奏が俺の友だちで、本当に良かったよ…」隼人
隼人は“友だち”という言葉が思わず胸に刺さったその棘のような痛みに知らないふりをしてなんでもないようにそう言った。
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