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「そうだったんだ…ありがとう、心配してくれて」花奏
花奏は素直にそう言って隼人に微笑みかけた。
隼人はその微笑む姿に見蕩れてしまうたびに複雑な思いになっていった。
『こんな顔を見せられたら、言いたいことも言えなくなるよ…もし言ったら花奏はもう二度と俺にそんな顔を見せなくなるかもしれない……』隼人
隼人は心の中だけでそう呟くように言った。
隼人にとって花奏はずっと特別な存在だったーーー
けれど、そういう想いが心の中で大きくなるほど隼人は花奏が知ってしまえば離れていってしまうような気がしていた。
ずっと伝えたかった言葉も、想いも、今見ている花奏の笑顔がそれを伝えた瞬間、全てを失ってしまいそうで隼人はそれがいつの間にか怖くなっていた…。
するとふと花奏が目の前を立ち上がって言った。
「それじゃあ私そろそろ戻るね」花奏
「えっ」隼人
「ちゃんと食べるところも見届けられたし、部屋に戻って明日提出する課題急いでやらないといけないから」花奏
花奏はかばんを手に持ちながら隼人の方を向いてそう言った。
思わず今にも引き止めてしまいそうになるのをぐっと堪えながら隼人はそれを悟られないように落ち着いた表情で花奏を見て言った。
「そっか…ありがとう、なんか迷惑かけてごめん、おじやすごく美味しかった」隼人
「全然迷惑なんかじゃないよ、ちゃんとゆっくり休んでね」花奏
花奏はそう言うとそのまま部屋を後にして玄関を出て行った。
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