第5章 導かれるもう一つの運命の出会い

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そして京子は静かに話し出した。 「ごめん、大したことじゃないんだけど…心配になって、伊月くんのこと…」京子 「びっくりしたでしょ? 一条花って聞いたとき」京子 伊月は電話越しに聞こえてきた“一条花”という名前に静かに反応した。 そして伊月が何も言わないまま京子がひとり言葉を続けた。 「私も最初聞いたとき驚いたわ…花が、帰ってきたのかと思ったくらいよ…私でもそうなのに、伊月くんはもっとよね…」京子 「ああ、僕も最初聞いたときはだいぶ動揺したよ…」伊月 「伊月くん…」京子 「だけど、花は死んだ…それが変わることはない…僕たちの知ってる一条花はもうこの世にはいないんだーーー」伊月 伊月は声を低くしてそう言った。 それから電話を切った伊月は書斎にあるデスクの引き出しから仕舞っていた写真立てを取り出した。 その写真立ての中にはまだ大学1年だった頃の伊月と死んだ一条花が2人で写った写真が入っていた。 『花…君と同じ名前の新人小説家が現れた…君が最後まで叶えられなかった夢を同じ名前のその子は叶えたよ…』伊月 伊月は写真を悲しげに見つめながら心の中でそう言うと、伊月は当時のことを思い出していた。
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