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「本当にいいの?」伊月
「ええ、その代わり読んだらちゃんと感想聞かせてね」花
花は朗らかな笑顔を見せながら伊月にそう言った。
伊月は眩しいくらいの笑顔を見せる花にそれから少しづつ興味を抱いていった。
気づけば伊月はいつの間にか花に恋をしていたーーー
そしてその眩しい笑顔が伊月の心から消えることはなかったーー
花が亡くなってから10年の月日が経った今でも伊月の中にはずっと花がいた。
まるで、心だけが…時間が止まってしまったみたいに……。
「あの時、君が初めて僕に本を貸してくれたあの日、君は僕に将来小説家になりたいと初めて打ち明けてくれた夢だったーー」伊月
「もし君が生きていたら今日出会ったあの子みたいになっていたんだろうな…」伊月
伊月はひとり静かに写真立ての写真に涙をぽたぽたと落としながら写真に映る花に語りかけるようにひとりでそう言った。
それでも返ってくるはずのない返事をどこか待っている自分自身に今でも現実を受け止め切れていないのだとこの時伊月は言葉もなく自覚していた。
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