展望台

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声のする方をジッと見つめていると、闇に目が慣れてきてうっすらと人の輪郭を捉えることが出来るようになってきた。 その影もこちらをしっかりと見つめて視線を離すことはない。 「やあ、こんばんは。最初は誰かがいるとは思わなかったんだ。驚かせてしまったならすまない」 「こんばんは。大丈夫よ、驚いたことは確かだけれども、それはあなたが急に一人で喋り出したのとはあまり関係がないわ」 その影は声から察するに女性であり、比較的若い年齢だということが分かった。 目を見ながらゆっくりと隣まで歩いていく。 「それにしても、こんなところで一体なにをしているんだろう。星空を眺めに来たのかな」 彼女に近づくと、服装は辺りが暗くてよく分からなかったが、顔立ちがどことなくあどけなく、幼さと男の子らしさを醸し出していることに気づいた。 もちろん胸部や体のラインなどは女性であることを示しているのだが、全体的な雰囲気としてはボーイッシュであると言っていいだろう。 彼女は僕の言葉には特になにも答えず、腰ほどまでの丸太の柵に両手を置いて夜景を眺めていた。 僕はその隣まで行って、彼女の肩を軽く叩いて、ビール瓶を一本差し出す。 彼女は最初はただのジュースだと思って受け取ったのか、それがアルコール飲料だとわかると、笑って丸太の柵に置いた。 「一人の大人として扱ってくれるのは嬉しいけど、まだ私は子供なのよ」彼女は笑って言う。
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