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この部屋に住んだのはたった1年、ということになってしまった。
退去のために不動産屋に出向いた時、偶然あのおにいさんがカウンターにいた。
「やっぱり・・ダメでしたか?」
たぶん、出てしまったから1年で引っ越すのだと思ったのだろう。
申し訳なさそうに視線を下げるおにいさんに、私は恥ずかしいほどの明るい声をかけた。
「違うんです。出たは出たんですけど・・幽霊じゃなかったんです。
おかげで私のとこに幸運が舞い込んできて・・
実は私、結婚することになったんで、それで部屋を引き払うんです」
「え?そうなんですか!」
おにいさんはポカンと口をあけ、私の顔を見つめていた。
「はい、おかげさまで・・きっとあの部屋に住んだから・・
こんなに急に幸せに巡り合えたんだと思ってます」
複雑な表情のおにいさんが次第に笑顔になっていった時、
耳元でまたあの音が聞こえた。
シャンシャン・・シャンシャン・・・
おわり
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