第3章 不思議な光景から

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                 * この部屋に住んだのはたった1年、ということになってしまった。 退去のために不動産屋に出向いた時、偶然あのおにいさんがカウンターにいた。 「やっぱり・・ダメでしたか?」 たぶん、出てしまったから1年で引っ越すのだと思ったのだろう。 申し訳なさそうに視線を下げるおにいさんに、私は恥ずかしいほどの明るい声をかけた。 「違うんです。出たは出たんですけど・・幽霊じゃなかったんです。  おかげで私のとこに幸運が舞い込んできて・・  実は私、結婚することになったんで、それで部屋を引き払うんです」 「え?そうなんですか!」 おにいさんはポカンと口をあけ、私の顔を見つめていた。 「はい、おかげさまで・・きっとあの部屋に住んだから・・  こんなに急に幸せに巡り合えたんだと思ってます」 複雑な表情のおにいさんが次第に笑顔になっていった時、 耳元でまたあの音が聞こえた。 シャンシャン・・シャンシャン・・・ おわり
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