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換気口さえない、トイレがあるだけの部屋はとてもじゃないが居心地が悪くて、霞は鉄格子を両手で掴み、その間から顔を覗かせて次の手を考えていた。
「さっきの騒ぎはお前か?」
「え?」
顔を動かして後ろを見れば、そこには3人の男がいた。
一人は紫の髪が洒落た感じに分けてあり、目つきがあまりよろしくない。
一人は耳にピアスをつけているピンク髪の男で眠たそうにしており、最後の一人は白の短髪でにこやかに笑っている。
霞は鉄格子から離れてそちらに向かうと、途端に白髪の男に腕を引っ張られる。
「え!?」
勢いよく男の方へ倒れてしまったかと思うと、そのまま首を腕で締められる。
苦しくて腕をバンバン叩いていると、他の2人は特に助ける素振りもなく、ピンクの髪の男に至っては欠伸をしていた。
「ぐぐぐぐ!!!!」
「うるせぇんだよ。てめぇみてぇな馬鹿がいるからおちおち寝てらんねぇんだよ、分かるか?分かったら返事しろ」
声を発することが出来なかったため、霞は顔を上下に小刻みに動かして応えた。
するとようやく腕を離してくれて、霞が苦しそうにゲホゲホしているにも関わらず、首を絞めてきていた張本人は笑顔のままだった。
「けほっ。あんたら誰?てか、俺はここから逃げたいだけなんだけど!!何が悪いんだよ!」
「で、結果逃げられたか?今日で脱獄失敗は何度目だ?言加減諦めろ」
「嫌だ!諦めねえ!!俺は絶対、諦めねえ・・・!!」
「「「・・・・・・」」」
霞以外の三人は互いの顔を見合わせると、ため息を吐く。
「なんか良い風に言ってるけど、何が悪いってそもそもここにいることの意味を分かってんのか?」
「分かってるよ!なんてったって、俺前科13犯だし!」
「ダメだ。こいつダメだ」
呆れて何も言えないでいると、霞が看守たちのことを聞いてきた。
翡翠、夕凪、そして胡蝶は、脱獄が発生した場合に現れるため、普段からウロウロと歩きまわって見張りをしているわけではない。
4人目の名が花守であることしか分からず、どういった力があるのかもあまり知られていない。
というのも、そもそもこの監獄で脱獄しようと試みる者などほぼいないからだ。
ここに約一名その馬鹿がいるが・・・。
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