更衣室にいた…?

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 そこには誰もいなかった。でも、確かに私はさっきドアの隙間から黒い人影が動いているのを見た。はっきりと見た。  少し怖くなったが、疲れていたこともあり、気のせいだろうと思うことにして着替えはじめた。  不思議なことに、その間更衣室には誰も入ってこなかった。いつもなら4人は入っている時間だというのに。まるでこの更衣室だけ別世界に持っていかれたかのように、辺りはしんと静まりかえっていたのだ。  ふと、私の背後に誰かが立っているんじゃないか。このまま更衣室に閉じ込められて死ぬまで出られなくなるんじゃないか。などという恐ろしい想像をしてしまい、全身に鳥肌が走った。  ーー違う。あれはぢの見間違いだから!  私が頭の中でそう叫んだ瞬間、バーン!と思い切り何かが叩きつけられるような音が部屋中に響き渡った。かなり大きな音だった。  窓の冊子に掛けられていた傘が3本、同時に床に落ちたのだ。はたしてこんな偶然があるだろうか。床に散らばった傘のうち、一本は私のものだった。そして、それだけ持ち手の部分が根元からぽっきり折れていた。  私は急いで着替えを済ませ、更衣室を出た。不吉だったので、傘は最寄りの駅のごみ箱に捨てた。  あの更衣室に、何かいたのだろうか。
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