あの世行きの列車

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 しかし、そこに現れたのはどちらでもなかった。掠れた汽笛の音が鳴り響き、弱々しい光が南の方角からゆっくりやって来た。  それは今までに見たこともない車両だったという。車体はすべて黒く塗り潰され、長さも三両ほどしかなかった。それが、強風というわけでもないのに徐行運転しながら四人の前を通過したのだ。  車内は裸電球のようなものにぼんやりと照らされており、何人か人が乗っているのが見えたのだが、その乗客らしき人影は皆一様に下を向き、窓にへばりついてぶるぶると痙攣したように肩を震わせていたらしい。それは狂っているようにも、泣いているようにも、笑いを堪えている様にも見えたとか。  電車が通りすぎると、何事もなかったかのように踏切のバーが上がり、四人は再び車を走らせた。すると、どういう訳かすんなりと目的地の近くまできてしまった。しかしながら、あんなものを見た直後に心霊スポットになど行けるはずもなく、その日はすぐにお開きになったのだという。  友人は言う。 「どう見ても生きた人じゃなかったねぇー。あれの後追っかけたら、どこに行けたのかなぁー? お前も気をつけろよ!」
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