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カーテン越しに日光が部屋に差し込む。
閉じられたまぶたでもその日光が感じられて。僕は、
「眠てえ。あー学校行きたくない。大学受験からも逃げてえ」
とささやきながら目を開けた。
「……?」
僕はきょろきょろした。
きょろきょろして、自分の服装が寝間着ではなくファンタジーの登場人物が来てるようなヨーロッパ風の鎧になっていて。そばには剣がおちていた。
僕は草原で寝てたのを起きて上半身を起こしているようだった。
さらに周囲を見渡せば
「あ、あ、あー!」
思わず驚きのあまり大声を出してしまった。
豚鼻のゴブリンと、ビキニアーマーの美少女戦士のバトル!
豚鼻のゴブリンはぎゃあぎゃあ騒ぎながら美少女戦士に襲い掛かるが、敢え無く蹴りを入れられて。尻もちをついて。
「ぎゃいんぎゃいん!」
と、慌てて起き上がって、まるで犬のような声を出して逃げてゆく。
「……」
僕はぼーせんとそれを眺めるしかなかった。
美少女戦士は、エレヌーオは(なぜ僕は彼女の名を知っているのだろう)、座り込んできょとんとする僕を、ゴブリンを見るのと同じようにきっと鋭く睨む。
さっと風を切る音がしたら、剣の切っ先が僕の鼻先につきつけられていた。
「ちょ、ちょっと待ってエレヌーオ。僕は敵じゃないよ」
「いや、敵だ! ユキヤ、お前は敵になった!」
「なんで!」
何故かエレヌーオも僕の名前を知っていて。そのビキニアーマーの大胆な姿に見惚れる余裕などもない、剣の切っ先を向けられて、僕はひたすらパニック。
「お前のだらしなさのために、どれだけ私の仲間が葬られたか」
「はあー、なんの話だよ!?」
この意味不明な展開。僕のだらしなさってなんだ? それがエレヌーオやその仲間と何の関係があるんだよ。
「問答無用! 仲間の仇討ちだあー!」
エレヌーオは剣を大振りに掲げて、僕の脳天めがけて振り下ろそうとした。
「もうだめ!」
僕は目を閉じ、最期をさとった。ああ、わけもわからないままに異世界でビキニアーマーの美少女戦士に殺されちゃうなんて。
と、思ったら。
「待て!」
天から声がする。エレヌーオは振り下ろそうとする仕草を止めた。
「ユキヤ、君にチャンスをやろう」
「は、はい!?」
「まじめに勉強し、志望大学に合格しなさい」
「なんですかそれ!?」
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