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「ようし、約束しろ、合格して買い戻してもらうんだぞ。それができなかったら……!」
エレヌーオはこれでもかというくらいに鋭い目つきで僕を睨んで、剣の切っ先を突きつけた。
剣はゴブリンの黒い血で濡れていた。
僕は「は、はい、約束します、頑張ります」と言いながら、すとんと落ちるようにまぶたが閉じられて。それから、自分の部屋のベッドで目覚めた。
ふと、起き上がって本棚のラノベを一冊手に取れば、表紙にはエレヌーオ。
大胆なビキニアーマーの格好ながら、凛々しい顔つきで剣を肩に担いでいる。そんな彼女の、怒りと悲しみに満ちた顔を思い出した。
友達を失う悲しさはどんなものだろう。どんな気持ちで母さんが仲間のラノベたちを捨てるのを見ていたのだろう。
でも、大学に合格すれば、仲間が戻ってくる。そうなれば、エレヌーオは喜ぶかな。彼女の喜ぶ顔を想像したら、なぜか変にむず痒いような照れくささを覚えた。
「頑張ろう」
ぽそっとつぶやいて、ラノベを元に戻して、登校の支度をした。
終わり
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