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喧騒と煙草の臭いの中に俺はいた。
あちらこちらで思い思いの会話を弾ませ、中にはアルコールの魔力に毒され、上裸で逆立ちしているような輩もいる。あれが同い年の同じくらいの偏差値の人間だとは思いたくはなかった。
俺はこの春、大学生になった。
新入生歓迎会。
この時期になると、大学の各サークルや体育会は新入部員の獲得に躍起になり、新入生歓迎会という名の食事会や飲み会を、“先輩持ち”で度々開催する。
タダメシで新入生を吊り上げようという作戦らしい。
新入生も新入生でこの時期は友達作りに必死だったりもするため、そういった要因も相まって意外と人が集まる。
「おいおい、そんな偶然あるかよ!?」
俺の隣でまるで奇跡だとでも言わんばかりにそう声を上げたのが、その例の連れ――柳 秋人だ。彼は今、目の前にいる二人の同級生の名前に驚いている。
「えーっと、本名だよな?」
「本名に決まってるでしょ。あんまりしつこいと嫌われるよ、あんた」
俺の目の前に座る、綺麗な黒髪を後ろで束ねているのが白石冬美
切れのある目つきは、どことなくボーイッシュな印象を与え、その印象も手伝って随分と男勝りな女の子だった。
その隣に座るのが、東雲ナツメ。
冬美とは対照的におしとやかな印象のボブヘア。服装は、白い半袖に藍色のキャミソール、茶色のガウチョ……と今時の大学生って感じが強い。
そして、俺は一之瀬 ハル。
秋人が何度も何度もしつこく言っているのは、この四人の名前にそれぞれ「春」「夏」「秋」「冬」が入っている神様のイタズラとも言える偶然について、だ。
「こりゃあ運命としか言えないだろ。なあ、ハル!」
俺に初めて話しかけてきたときも、「俺は秋なんだ、なんか奇遇だな」とか何とか言っていた気がする。運命なんていう胡散臭い言葉を使い出したら、それこそ巷のナンパ師と大差ないのではないか。
「こんだけの人数いたら、それくらいの偶然はあり得るだろ。運命なんて無闇に使うと女にモテないからな」
「相変わらず冷めてやがるなぁ」
相変わらず、と言っても彼と出会ってからまだ一ヶ月も経っていなかった。とは言え、学生生活が始まってからというもの、ほとんどこの男が横にいるのは確かだった。
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