奇遇の季節

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秋人は気さくな男だった。 好奇心旺盛で何か珍しいことがあればすぐに首を突っ込んだし、誰か話題の人物がいればすぐに話しかけた。 おかげで彼の周辺にはコミュニティの網が張り巡らされていた。広く浅い付き合いではあるが、交流の幅は驚くほどで数え切れないほどの友達がいた。 反面、というか、それが災いしてなのか、トラブルも尽きなかった。 入学三日目でラグビー部の三年生に目を付けられ、右頬を真っ赤に腫らして登校してきたこともあった。しかし、不思議なことに今ではその三年生とは頗る仲が良い。 俺とはかけ離れた人種で、今までに会ったことのないタイプだった。あまりにも生物として違いすぎると自覚しているが、それでも彼の隣にいて煩わしさを感じたことはなかった。そして、秋人も同様なのか、よく俺に付いて回った。 何が気に入られたのかも分からなかったが、俺は俺で退屈しなかったので、この関係が気に入っていた。 「秋人君って、あの秋人君でしょ」 やはり秋人は目立つようで、この二人も彼の噂をどこかで耳にしていたようだった。 「あんまり良い噂は聞かないよね、悪いけど」 「誤解されやすい体質っていうの? 噂ってのは所詮は歪んだ伝聞の繰り返しの結果に過ぎないからな」 秋人はしたり顔でそれっぽいことを言う。 ナツメが「何それ」と小さく笑った。 ここからはきっと、彼のペースだろうと思った。 四人での会話は弾んだ。 この飲み会には30人以上も参加しているにも関わらず、俺たちのいるテーブルだけは別空間のようだった。 「サッカーとかフットサルやってたの?」 俺の素朴な疑問にナツメが答える。 「全然。私、スポーツ駄目だもん。冬美と歩いてたらね、あの綺麗な女の先輩に声掛けられて思わず来ちゃった」 「あ、奇遇じゃん! 俺らもそうなんだ! にしても美人だよなぁ、去年の学祭でミスコン獲ったらしいぜ」 二つ隣のテーブルで男に囲まれて飲んでいる噂の美人先輩は、俺たちの視線に気付いたらしく、小さく手を振ってくれた。 「あれ、もしかして俺に気がある?」 「安心しろ。完全にサービスだから」 そんなこんなで飲み会は日を跨ぐ頃まで続いた。 俺たちは連絡先を交換し、再会を約束して解散した。 結局、このフットサルサークルには入ることになりそうだ。
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