白い部屋

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 見知った顔を見つけて少し落ち着いたので、俺は辺りを見回しておかしなことに気がついた。この部屋には、出口がないのだ。まさか、この何もない部屋に閉じ込められたのだろうか?  軽くパニックに陥った俺たちは、走っても十五歩くらいしかない部屋の中を走り回り、普段なら近所迷惑になるであろう大声で叫び、壁を力任せに叩いたが、壁には傷一つつかず、周囲からは何の反応もなかった。  その時、壁の一部分が、他とは違う形状になっていることを発見した。よく見ると、壁の一部に四角く細い隙間のようなものがあり、自動ドアのような形状になっている。そこには赤く発光する小さなLEDランプのようなものが六つ取り付けられており、一つが消灯していて、五つが点灯している状態だった。  最近、リアル脱出ゲームなるものが流行しているのは知っていたので、もしかしたらここは、何か謎を解けば脱出できる部屋なのではないかと俺はぼんやりと推測した。  しかし、この部屋の中に謎めいたものは一つもない。部屋自体は謎に満ちあふれているが、解くべき謎が見当たらないのだ。もしこれが脱出ゲームだとしたら、何かしらの謎が用意されていて、それを解けば外に出られる、そういう仕組みになっているものだろう。最初はこの小さなLEDをどうにかするのだと思った。だが、じっと眺めても、触ってみても何の反応もない。ただ、赤く光っているままだった。  どうして俺たちはここに閉じ込められたのだろうか。一体誰が、何の目的で。
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