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それから、何時間が経っただろう。全く解決の糸口は見つからなかった。
これまで、ただ喚いているか、力なく座っているだけだった綾が、俺の方を向いて、ぽつりとつぶやいた。
「私たち、ここから出られないのかな……」
考えたくはなかったが、俺も少し、綾と同じ気持ちになっていた。
「家族とか、友達とか、私たちを探しに来てくれないのかな……」
綾は感情のダムが崩壊してしまったのか、言葉を続ける。
「もしこのまま死んじゃったら、明日の新聞に載るかな」
「死んだかどうかも確かめられないんだから、新聞も何もないだろう」
俺は冷たくそう言った。正直な気持ちと、強がりが半々で。
「そしたら、行方不明者として名前が載るのかも」
行方不明。自分で口にして、綾ははっとした。
「私、帰りたいよ……」
綾はうつむいて、ぽろぽろと涙を零した。
「おい……」
俺は、自分も泣き出したい気持ちだったが、ぐっとこらえて綾の側に歩み寄った。
そして、そっと彼女を抱きしめた。
「今は、俺もどうしたらいいか分からない。けど、きっと、何か方法があるはず。それに、これだけ時間が経ったんだから、みんな俺たちのこと探してるよ」
綾は泣きじゃくりながら、顔を俺の胸に埋め、うん、うん、と頷いた。
その時。唐突に。
カチャリと音がした。
まさかと思ってドアの方を見ると、ランプが一つ消えていた。残るランプはあと四つ。
「え」
俺たちは同時に声を上げた。鍵が開いたような音がして、ランプが一つ消える。
考えられる可能性はいくつかあるが、今の行動がきっかけになったと考えるのが自然だ。
一体何がきっかけだったのだろう。綾が涙を流したこと、それとも、俺が綾を抱きしめたことか。
そして、考え得ることを試していった。もう一度綾を抱きしめたり、思い切り太ももをつねって涙目になってみたり。次に、俺が綾の手に触れたとき、その瞬間は訪れた。また一つランプが消えたのだ。これで残り三つ。
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