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俺は、綾の唇にゆっくりと触れた。彼女の身体がぴくりと震え、その時、後ろでまたカチャリという音がした。やっぱりそうだ。俺の推測は間違っていない。あとは、もうこのまま……。
そして、服を脱がせにかかったところで。
カチャリ。
音を立てて最後の鍵が開き、すーっとドアがスライドし、開いた。
「あれ?」
俺たちはまだ最後まで至っていない。それどころか服もまだ脱がしていない。それなのにドアが開いた。
ということはつまり、俺の想像は誤っていて、何か違うきっかけで鍵が開いたということだろう。これが綾にバレると大変なことになりそうだったので、俺は必要以上に大きな声で言った。
「やった、開いたぞ! これで外に出られる!」
綾はここから出られるという喜びなのか、俺に服を脱がされそうになったという恥辱なのかは分からないが目には涙を浮かべていた。そんな彼女の手を無理矢理引いて、俺は開いたドアに向かった。
外に出ると、薄暗い廊下に出た。残念ながら、外に出られたわけではなさそうだ。
廊下の向こうには、俺たちが出てきたドアと同じような形に四角く空間が空いており、その向こうでは二匹のサルが、二本のバナナを仲良く食べている姿が見えた。床には、バナナの皮が四つ、転がっていた。
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