恋愛ジレンマ

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横浜駅へ着くと、改札で制服姿の圭太が仁王立ちして待ち構えていた。 「圭太、ごめん。遅くなって。」 「なに、練習長引いたの?」 「うん。コンクール近いしな。」 本当は玲の乗った電車を見送ったからではあるが、黙っておこう。騒がれても面倒だ。 「よし、じゃ、お昼食べよ。」 圭太と2人でハンバーガーショップへ入った。 食事をしながら、圭太は部活のこと、友達のこと、彼女のことをずっと話していた。 涼太はそんな弟との会話にただただ相槌を打つ。なぜ弟は自分にこんなことを話すのだろう。ただ話を聞いて欲しいのならば、たくさんいるであろう友達に話せばいいのだ。 とにかく涼太の頭の中は玲のことで一杯だった。 間違ったことはしていない、だけど、さっき自分の取った行動は彼にとっては正解ではない。 玲のご機嫌を取るために生きているわけではないけれど、嫌われたくないな、と思ってしまう。 「てゆーか、兄ちゃん聞いてる?」 「聞いてる。」 「じゃー、オレのカノジョの名前は?」 「サオリ。」 「正解!」 涼太は無意識に、あれだけ毎日のように彼女の名前を聞かされていたら覚えてしまう、と弟に言ってしまった。 昼食を食べ終わると、涼太は圭太に連れられて、同年代の男子達に人気な服屋に連れて行かれた。 所謂、高校生になったら一枚は欲しいよねというブランドだ。よく雑誌にも載っている。 実際に涼太もトップスを一枚持っている。気に入っているかはよく分からないが、良くも悪くも無難なその服はまるで自分のようだなと思ってしまう。 圭太はトップスのコーナーで、どれがいいか迷っているようだった。 「兄ちゃん、どれがいいかな。」 「好きなのにすれば?」 「どれがいいかわかんないから聞いてるんだよ。」 「じゃあ、これは?無難で着やすそうだよ?」 涼太は圭太に目の前にあった黒の丸首のトップスを差し出してみた。 「いいけどさー、どこにでもありそうじゃん。」 「しゃーねーじゃん、おれそんな、よくわかんねーんだよ。」 「あー、玲さんだったら…オシャレな服とか選んでくれるのかな?」 「多分…」 「なんでオシャレな人ってあんなにオシャレなんだろ。オレもあんな風になりたいな。」 「そうだな…」 「兄ちゃん、一緒に選んでよ。」 2人で服を見て回ったが、見れば見るほどよくわかはらなくなってしまい、結局、店員を巻き込んで選ぶことになった。 確かに圭太の言う通り、玲だったらあんな奇抜な色とかを何気なく着てしまうのだろうか。 だけれど自分にはそんな勇気などない。 何かを変えれる勇気があれば良いのに…そんなことを考えながら、涼太は楽しそうに店員と話している圭太を見つめた。
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