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「音がするよ」
「音がするね」
鳴き砂と呼ばれる砂浜
歩くとキュッと鳴る音
両親の手に包まれ歩く
その光景の記憶の中で
幼い自分は大きく笑う
全て幻だったのだろう
突き刺す日差しが真上
整備されてない砂利道
一人、身体をひきずる
叫ぶように揺れる地面
音が僕を揺らし泣かし
「終わっちゃうよ」
「終わっちゃうね」
幼い子供が走っていく
母の手にひかれて走る
「おはよう」もない朝
「おやすみ」もない日
「さよなら」が残った
僕の記憶はこの世界の
誰かの絶叫に貫かれる
僕は砂利を踏みつけた
騒音で何も聞こえない
それに紛れて僕は呟く
「鳴らない」
あの砂はもう鳴らない
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