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「俺じゃダメかな。やっぱりもう無理?」
無理とか無理じゃないとか。
そうやって確信を突く聞き方をするのは本当にズルイ。
「…あのね、私たちももう若くないよ。
一時の感情とかで将来を描くのは難しいの。
好きだから、とか幸せにしたい、とか飽くまでも理想でしょ?そうできる証拠ってないでしょ?男の人はこれから先どんどん稼いで成長してくのかもしれない。でも女は違うの。ハタチ超えたらもう遊んでられないの。」
「…じゃあ、アキの好きな人はどうなの?アキのそういう考えも理解してくれるの?」
そう言われて、言葉が詰まった。
ふと、昨日の出来事が頭をよぎる。
私は高橋さんの何も知らないし、高橋さんも私を何も知らない。
それで本当に好きでいられるのか、恋愛ができるのか。そんな証拠なんてない。
でも、少なくとも高橋さんは大人だ。
ちゃんと社会に出て働いて、メリハリのある人だ。
「信じたいって思ってる。」
自分で口にしてから自分で納得した。
信じることは大切だ。
どんな時だって相手を信じられなければ
何もできない。頼れないし自分でいられない。
私は亮太のことを信じてあげられなかった。
あの子とは遊びだと言われても証拠を求めて、それがなければ浮気だと思い込んでいた。
でも、高橋さんは違う。
これから何があっても私を待っていてくれる。
そう信じていた。
「信じる…かあ。」
「うん…」
2人の間にしばらくの間沈黙が流れた。
「まあ、確かに。俺じゃあアキのこと幸せにできないのかもな。こんな状況で信じろっていうほうが無謀だったよな。ごめん。」
先に口を開いたのは亮太だった。
「ううん。亮太が悪いわけじゃない。私も悪い。」
「なんか、ずっとアキがいたから、アキがいなくなったって実感が湧かなかったよ。」
「うん。」
亮太は伏し目でクリームソーダのソフトクリームをスプーンで掬って言った。
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