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「でも、まあ、俺もそろそろ大人にならなきゃだよなあ。俺、アキの優しさに甘え過ぎてたんだよなあ。」
「ううん。私も、もちろん悪いところはあった。お互いこういう運命だったんだと…思う。」
そういうと、亮太はすこし目線をあげてからまた伏せてふふっと消え入りそうな声で笑った。
「運命とかいうキャラだったっけ?お前。
…そしたら新しい相手とは元々結ばれる運命だったんだろうな。」
ストローで氷を突きながら、少し唇を尖らせる目の前の彼にかける言葉は見つからなかった。
結局それが私の答えだったんだと思う。
この懐かしい喫茶店とも今日でお別れ。
もう二度と来ることはないだろう。
「どういう奴なの?アキが好きになるような男って。」
「会社の上司だよ。」
「ふーーん。優しい?」
「うん。優しい。」
ふと高橋さんの言動を思い出し、
自然と顔が綻ぶ。
「……そっか。
俺、お前が幸せになれるならもうそれでいいかもしれんわ。」
「……ありがとね。」
亮太も知らない間にそんなかっこいい
男らしいことを言えるようになっていた。
付き合っていたってお互いをちゃんと見ていなければ、付き合ってる意味もなかった。
私は亮太の何も知らなかったし、亮太も私の何も知らなかった。
ひしひしと崩れていく私たちの関係にすら気付かずに、気付いたときにはもう、こうなっていたんだから。
なんだか虚しい気持ちで溢れかえると同時に
無性に高橋さんに会いたくなった。
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