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「癸様、これチーズスティックって言うんだって。じぃのおつまみになるかなぁ?」
そう言って屋台も終わりに近づく頃チーズを棒状に巻き油で揚げた物を癸に見せた。
揚げた香ばしい匂いがしているそれは洋酒には合うだろうが少女がじぃと呼ぶ者は月詠の配下の年嵩の狐であり洋酒の類いは好まず、日本酒や自然界で出来る猿酒などを嗜んでいた。
「性根まで爺のようなジィ殿には油は重かろ。輝夜が食べや」
「あー、おじぃちゃんだから無理かぁ。じゃあ食べちゃおー…ん、中にもチーズ入ってておいしーい!」
外はカラリと揚がり中には熱で溶けたチーズがトロリとしたそれは大層彼女のお気に召したらしく嬉しそうに笑みを溢す。彼女の声は喧騒の中でも良く通り、声を聞いた者が何かと振り向く。そうして見つけた美しい3人組に目を奪われた。
少女がその場を立ち去った後、彼女がチーズスティックを買った屋台には客が殺到し、あっと言う間に行列が出来た。
そして1時間もしないうちに翌日のストックまで出し切ってしまい店じまいとなった。
日本人とは人気の物や人が集まる物には逆らえぬ困った性を持つ生き物なのである。
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