狐と蛇神と時々…

知らぬは本人ばかりなり

後日そのお祭りではあっと言う間に売り切れとなった屋台は伝説となり、火付け役となった美少女の噂と共にしばらく祭り参加者達の話題を独占した。
ついでに言えば人に紛れたアヤカシも多少ドジをやらかした者がおり、浴衣に尻尾を付けていた人が居て可愛かったとか、ぶつかられて振り向いたら猫耳を付けた人だったと言うような噂も一部では流れていた。

「あー、楽しかった。なんかチーズスティックあの後行ったら売り切れだったねぇ。おいしかったのにー」

「だからじゃろ。あれくらい百目鬼に作って貰えば良いじゃろ」

「知らぬは本人ばかりなり、とは輝夜の為にある言葉の様よ。ほんに輝夜の側は面白い」

ほとんどの場合噂や騒ぎの火付けとは無意識に行われる物。自覚し行う者、それは即ち小悪魔と称される事となるだろう──。

美貌の3人組や、尻尾の付いた人、猫耳を付けた人の噂も夏の陽炎と共に次第に散っていくものである。