寝苦しい夜

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寝苦しい。とにかくその夜はひたすら寝苦しかった。 まだまだ残暑。いつまで残暑?もういい残暑? 部屋の端から怪しい静音を放つエアコン。イマイチ冷房の効き悪し。 だからこんなにも寝苦しいのだろうと固く信じ、まだ重い瞼は開けまいと心に誓いながら…。 お腹だけは冷えると下痢が長引くんで薄い羽毛布団が必要なのよ…。 …しっかし暑い!マジ寝苦しい。 しかしなんで今夜に限ってこんなに臭うんだろう。 妙に鼻の裏、濃い臭いがこびりつく感じなのよ、月日の経った汗の塊のような、それとも男の色気のような。 あ、これ、今夢の中ならば一度起きればこれ、リセットじゃないの? 悪臭消えるんじゃない?違う? そ、そうよね…、きっとそうよね! じゃあ…もう起きる、アタシ!! ここは勇気を振り絞って目を開けた。 目覚めてみると…。 ベッドの上に汚れた靴下が無数散乱していた。 それはどれも間違いなく汚く、臭かった。 な、なぜこんなことに…と考える隙も与えられず、 誰かが顔の真上から鼻声で話しかけて来た。 「やっど目覚めだが、こどゲス女が」 え…聞き辛い 。 今 、何と? 「こ・ど・ゲ・ス・お・ん・だ・が」 風邪気味か? …ゲス女って?アタシのこと?まさか。 これは夢だ。ダメだ、もっかい寝よう。 「二度寝ずんな、こだ!」 やっぱり風邪気味だね? 鼻が辛いのか、イマイチ発音が悪く聞き取りにくい。 振り返りテーブルのティッシュに手をつけたこの男。 丸めて小槍か鼻栓か、鼻にムギュムギュ詰め込んでた、目もチカチカしてるみたいだけど。 「いや、この場合のゲス女は『下水道的臭いが大好物な女』のゲス女ね」 知らない。そんな略語知らない。 けど、その略語をもってしてもアタシにこの今の状況は掴めない。 「そりゃこの臭いだ。彼氏も逃げるっつーの」 「なにそれ」 あのさー、言っておきますけど、アタシの部屋だよね?ここ。 え?で?彼氏も逃げる…って? え、逃げたんだったっけ? その辺り…昨日飲みすぎたんだか、はっきり思い出せない…。
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