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8
電車は走り出す。
私たちが眠りに落ちる前の、帰るべき日常に向かって。
でも――――。
「遠慮しないで寝たらいいじゃないですか。そんなに人も乗ってないし。ほとんど寝てないんでしょう?」
「いい。これ以上君に借り作りたくない」
彼は胸の前で腕組みして目を瞑る。
「……寝心地良かったんじゃないんですか?」
黙って、何も言わないと思ってたら、そのうち寝息が聞こえてきて、こつんと彼の頭が私の肩に乗った。
すう、と穏やかな寝息を立てて彼は眠っていた。
「……ゆっくり休んでください」
小さく声をかけると、気持ち、彼が微笑ったように見えた。
『終着駅の恋人』了
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